あるところに、倉庫にしまわれて忘れ去られた木箱がいました。
ある日、木箱は思います。「こんなホコリを被ったままの一生じゃ嫌だ! もっと最高の木箱になりたい!」木箱は外に飛び出しました。

お店に並んだ綺麗な木箱たちを見て、自分もあのような美しい木箱になりたいと思いました。
木箱はホコリを掃い、自分を磨き上げます。
けれど、どれだけ頑張っても、質素な板でできた木箱はくすんだ色のままです。
工場で整然と積みあがる屈強そうな木箱たちを見て、自分もあのような強い木箱になりたいと思いました。
木箱は石をかき集め、自分の上に積み上げます。
けれど、どれだけ耐えようと無理をしても、薄い板でできた木箱はぐしゃりと潰れてしまいそうです。
「ぼくは、出来の悪い木箱なんだ」
木箱は、毎日悲しみました。

そんなある日、木箱は一羽の鳥に出会います。
「鳥さん、鳥さん。あなたなら空高くから見渡せるので世界をよく知っているでしょう。
教えてください。ぼくはどうしたら最高の木箱になれるの?」

鳥は笑いながら答えました。
「最高の木箱だって? 何を言っているんだい。きみは自分が誰であるかまるでわかっていないようだね」
どれ、と鳥がその長いくちばしで木箱をつつきました。
すると、木箱はぱりんと割れて中から色鮮やかな美しいツボが現れたのです。

そのツボは持ち主が大事にするあまり、木箱に入れられずっと倉庫にしまわれていたのです。いつしか持ち主が亡くなり、そのまま忘れ去られていたのでした。
木箱は、いえ、ツボは、ようやく「最高の自分」を見つけることができました。
しゃんと背筋を伸ばしたツボは、それはたいへん美しいツボでした。
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高さんが書いた原案を元に、編集・イラストを手がけさせていただきましたつっちーです。
高さんの優しくシンプルながらも大切な熱い想いが伝わるように。
そんな想いを込めてお話を描きました。
普段はカメラマン活動をメインに、ライター・イラストレーターとしても活動しております。

https://kinocokaeru.com/
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